雷の道「十五年ぶりの故郷で、初恋の彼女と再会した六日間」 ──記憶と現在が交差する、静かな再生の物語。

「いつも昼間から飲んでるの?」

「今日は特別。せっかくジュンが来てくれたんだからさ。嬉しいのよ。変わり映えしない毎日だしさ、ずっとこの町にいるんだもの。ちょっとは楽しまないとおばさんになっちゃうじゃない?もうおばさんかな。まあ、どうでもいいんだけどさ、年齢なんて。同級生って安心するのよね。歳の差、気にしなくていいから。どこに居てもさ、何してても、私達、ずっと同じ歳なのよ。生きてる限りね。スナックで働いてると気になるのよ。歳の差がね。初めて来たお客さんとか。いくつなのかなとか、いくつに見られてるのかなとか。あ、聞いてる?私、水商売してるの。高校卒業してずっと」
僕は首をふった。
知らなかった。
知るはずもない。

「美沙岐ともね、一緒に働いたことがあるのよ。美沙岐はすぐに辞めちゃったけどね。でもずっと一緒だったな。小学校の時はクラスが一緒。中学ではクラブが一緒。高校では部活とバイトが一緒」

「中退したって聞いたけど」

「私が?」

「美沙岐が」

「誰から?」

「ちょっと小耳にはさんだんだ」

「狭い町だもん。言いたい奴には言わせとけばいいのよ。それで美沙岐とはどうなってるの?」

「どうって、どうにもなってないよ」

加奈子は「ふーん」と言って上目遣いで含み笑いをしながら自分のコップに日本酒を注いだ。
溢れても気にしなかった。