「汚いけどどうぞ。今は誰も居ないの。さっきケンちゃんから電話あったよ。ジュンに刺身を持たせるって」
ケンちゃんというのは僕の父の事だ。
なんで加奈子からケンちゃんなんて気安く呼ばれているのかわからないけど仲が良いらしい。
加奈子は暗い廊下を奥に進んでいく。
足元が暗くて何かを踏んでしまいそうだ。
加奈子が奥の扉をあけると、廊下に光が差し込んだ。
部屋の中に入ると窓から大きな川が見えた。
「ここ、我が家のメインルーム。眺め良いでしょ。でも台風の時とか大変なのよ。雨戸が無いから板を窓に打ちつけたりして。昔はね、美沙岐のお父さんが来てくれてたりしてたんだけどね、あ、ここ、美沙岐のお父さんが建てたのよ。ジュンの家もそうでしょ?それで仲良くなったみたいよ。父とケンちゃん」
知らなかった。
僕が中学生の頃の話だ。
その頃から父はここに出入りしていたことになる。
「でも、うれしいな。ジュンが刺身持ってきてくれるなんて。慌てて帰ってきちゃったわよ。昼間から飲んじゃおうか?美味しい日本酒があるの。今日は休みでしょ?つきあうわよ。そういえば美沙岐と会ってるみたいね。ちょっとびっくりよ。いつの間にそんなことになってたの?それつまみにさ、お酒飲もうよ。なんなら美沙岐も呼んじゃう?子供は姉のところに預けてるから夜まで自由なの」
加奈子は僕の方を振り返りながら、部屋の奥にあるソファーに腰を降ろした。
僕は白い脚に気を取られながら隣に座った。
正面のガラス窓に僕らのシルエットが映った。
「こっちこそびっくりしたよ。結婚も子供も離婚も。僕が日向ぼっこしてる間に一通り経験したんだな。恐れ入るよ」
「そんなんじゃないわ。ただ生きてきただけ。そしたらこうなったの。なりたくてなったんじゃないわ。子供だって可哀そうだしね。後悔するのが嫌だったのよ。だから全部受け入れて全部前に進めた、その結果がこれ。そんな事よりも、さ、飲もうよ」
そう言うと加奈子はテーブルに置いてあった二つのコップに日本酒を注ぎ、一つを僕に手渡した。
そして軽くコップを合わせると、細い首を弓なりにして一気に飲み干し、大きな吐息をついた。
白かった肌がつま先まで赤くなった。
ケンちゃんというのは僕の父の事だ。
なんで加奈子からケンちゃんなんて気安く呼ばれているのかわからないけど仲が良いらしい。
加奈子は暗い廊下を奥に進んでいく。
足元が暗くて何かを踏んでしまいそうだ。
加奈子が奥の扉をあけると、廊下に光が差し込んだ。
部屋の中に入ると窓から大きな川が見えた。
「ここ、我が家のメインルーム。眺め良いでしょ。でも台風の時とか大変なのよ。雨戸が無いから板を窓に打ちつけたりして。昔はね、美沙岐のお父さんが来てくれてたりしてたんだけどね、あ、ここ、美沙岐のお父さんが建てたのよ。ジュンの家もそうでしょ?それで仲良くなったみたいよ。父とケンちゃん」
知らなかった。
僕が中学生の頃の話だ。
その頃から父はここに出入りしていたことになる。
「でも、うれしいな。ジュンが刺身持ってきてくれるなんて。慌てて帰ってきちゃったわよ。昼間から飲んじゃおうか?美味しい日本酒があるの。今日は休みでしょ?つきあうわよ。そういえば美沙岐と会ってるみたいね。ちょっとびっくりよ。いつの間にそんなことになってたの?それつまみにさ、お酒飲もうよ。なんなら美沙岐も呼んじゃう?子供は姉のところに預けてるから夜まで自由なの」
加奈子は僕の方を振り返りながら、部屋の奥にあるソファーに腰を降ろした。
僕は白い脚に気を取られながら隣に座った。
正面のガラス窓に僕らのシルエットが映った。
「こっちこそびっくりしたよ。結婚も子供も離婚も。僕が日向ぼっこしてる間に一通り経験したんだな。恐れ入るよ」
「そんなんじゃないわ。ただ生きてきただけ。そしたらこうなったの。なりたくてなったんじゃないわ。子供だって可哀そうだしね。後悔するのが嫌だったのよ。だから全部受け入れて全部前に進めた、その結果がこれ。そんな事よりも、さ、飲もうよ」
そう言うと加奈子はテーブルに置いてあった二つのコップに日本酒を注ぎ、一つを僕に手渡した。
そして軽くコップを合わせると、細い首を弓なりにして一気に飲み干し、大きな吐息をついた。
白かった肌がつま先まで赤くなった。

