雷の道「十五年ぶりの故郷で、初恋の彼女と再会した六日間」 ──記憶と現在が交差する、静かな再生の物語。

念のためスマホで検索した。
画面に地図が表示された。
川と川に挟まれた土地の真ん中に一本道がありその先端の三角地が加奈子の家なのだ。
果てしなく遠くに見える道の先端までカヤと歩いた。

単調でさびれた道だった。
誰一人すれ違わなかった。
敷地は門も塀もなく無防備に解放されていた。
壁は所々破れ瓦から草だか何かわからないものが突き出ていた。
朽ち果てるのを待っている。
そういう家だ。

軒先に真新しい釣り竿が立てかけられていた。
カヤを連れてその道路と敷地の境界と思われる場所に立つと、軒先に繋がれていた大きな犬が勢いよく吠えた。
僕はそれをしばらく、といっても三十秒くらいだけど眺めていた。
そのうちに犬も吠えるのに飽きると、静かになって寂しい目をした。

誰も居ない。
それが結論だった。
遠くから船のエンジンの音が聞こえた。
この先には大きな川がある。
でもここからは見えない。
そういう場所なのだ。

僕は来た道を帰っていった。
家の前に父が立っていた。
僕に気が付くと手をあげた。
年金暮らしの父は毎日自分の趣味に没頭している。
ゴルフに囲碁に釣りに。

今朝も釣りにでかけていたらしく、たった今、帰ってきたようだ。
それっぽいジャケットを着てゴム長靴まではいている。
歳を取ることの美点は死ぬまで、病気になるまで自由だと言う事だ。