雷の道「十五年ぶりの故郷で、初恋の彼女と再会した六日間」 ──記憶と現在が交差する、静かな再生の物語。

「そう言えばさ、甲斐加奈子って覚えてない?昔、中学の頃、陸上やってた。小学生の時、たまに来ててさ、姉ちゃんと遊んでた加奈子。昨日、子供連れて歩いてるのを見たんだけどさ、今、何してるか」

「さあ、わからないわね。最近はすっかり近所づきあいってなくなったからね。子供が大きくなるとね、ゴミ出しの係くらいしか回ってこないのよね。それよりもさ、早起きしたんだったら、カヤの散歩に行ってきてよ」

カヤというのは僕がこの家を出てしばらくして飼い始められた雑種の犬だ。
小柄ながらよく動く。
いまどき珍しく外で飼われていて、時代に取り残された昔ながらの雑な扱いを受けている。
僕は多少の同情もしながら直ぐにカヤを連れて散歩をはじめた。
もちろん加奈子の家を偵察に行くためだ。