「久しぶり!」肩をたたかれ振り返ると加奈子がいた。
僕は放心した。
ホッとしたんじゃない。
がっかりしたわけでもない。
僕は美沙岐のどんな過去でも受けいれる準備をしていた。
その覚悟がつかないまま、見放され朽ちていくだけの建物みたいに佇んだ。
加奈子が何か話しかけて来たけど意味があまり理解できずにうなずいているだけだった。
ただ時が流れ過ぎていったことはわかった。
若かった僕らの前に大きな波が来て洗いざらい持ち去って、僕たちはここに居る。
ここにたどり着いている。
加奈子は僕たちに手を振った。
見えなくなると美沙岐は「海が見たいわ」と言った。

