雷の道「十五年ぶりの故郷で、初恋の彼女と再会した六日間」 ──記憶と現在が交差する、静かな再生の物語。

アーケードを出るとさっきまでの陽ざしが影を落とし、小粒の雨が降り始めていた。

僕は手をかざし掌にその確実さを感じた。
ワイパーは小粒な雨を吹き飛ばし、視界を良好にした。
でもすぐに雨粒はガラスの表面にへばりついた。

僕はその繰り返しの中で美沙岐の事を思った。
彼女の細い身体の事を思った。
小さな手の事を思った。
レジに立つ彼女は「もちろん」と言った。
僕の事を覚えていると。

あの場所から再び動き出したのだ。
止まっていた僕らの関係が。
それはとても重要な事に思えた。
始まりの場所。
そこには何かがある。
それを見つけない事には先に進めない。

駐車場。
足早にデパートに向かう。
風除室。
通路を走り文具売り場を通り抜けレジの前に立つ。

二人の制服を着た女性が客の対応をしていた。
でも美沙岐の姿は無かった。
十五年前から居る古参の女性が無表情に商品をかごに詰めているだけだった。

僕は辺りを見回した。
休憩中だってこともある。
倉庫に欠品を取りに行った可能性だってある。
美沙岐がどこに行ったのか、ここに居る人達に聞くこともできる。

嗚呼、僕は美沙岐の人生に入り込もうとしているんだ。
彼女が今まで築いてきたものの中に。