僕が最後の一口を食べ終わると同時に、女の子がコーヒーを運んできた。
「オリジナルブレンドよ」と女の子は言った。
そして「私達そろそろ行くね」と小夜子さんに向かって言った。
男の子もそれに同意した。
後には僕と煎れたばかりのコーヒーと小夜子さんが残った。
「うるさくてごめんなさいね」と小夜子さんは言った。
僕は首をふった。
そしてコーヒーを口に含んだ。
芳醇で複雑な苦みが口の中に広がった。
「ひさしぶりに帰省したんです。そしたら昨日、図書館であの子たちをみかけて」
「ちゃんと勉強してたかしら?」と言って小夜子さんは笑った。
目元に小さなしわが出来た。
長い髪を後ろで縛っていて首が細かった。
「横浜」と思った。
ランドマークタワー、赤レンガ倉庫、港の見える丘公園。
中華街。
女の子と行った。
何人かの女の子。
二年続いた娘も居れば半年続いた娘も居た。
三日で別れた娘も居た。
十五年。
それでも心が震えるほど好きになった事は一度も無かった。高いレンガの壁を作っていたから。
「どうかな。たぶん。勉強していたはずです。本当はよく見てなかった。でも、少し大人びて見えたけど」
「制服を着るともっと子供っぽくなるわ」
「平日のこの時間に、ここでアルバイトですか?」
「そうね、確かに平日のこの時間は学校に行ってる時間ね」
これ以上、立ち入れない。
そういう気がした。
これ以上、立入る権利も資格も度胸も無かった。
話題を変えよう。
「この店はいつから始めたんですか?僕が高校生の頃には無かった気がするんですけど」
「五年前よ。この町出身の主人と始めたの。どっか行っちゃったけど。彼はインテリアデザイナーでね、ずっと構想があったみたい。準備に一年かかったけど、二人で今までのものを全部捨てて始めたのよ」
鐘の音がした。
振り返るとラフな格好をしてカメラを抱えた青年が入ってきた。
カメラと言ってもかなり本格的なものだ。
仕事にも使える。
いや仕事に使っているんだろう。
そんないかにもカメラマン的風貌だった。
その男に向かって小夜子さんは「いらっしゃい」と言った。
男は店内を見まわし
「カズとミサは?」と言った。
「オリジナルブレンドよ」と女の子は言った。
そして「私達そろそろ行くね」と小夜子さんに向かって言った。
男の子もそれに同意した。
後には僕と煎れたばかりのコーヒーと小夜子さんが残った。
「うるさくてごめんなさいね」と小夜子さんは言った。
僕は首をふった。
そしてコーヒーを口に含んだ。
芳醇で複雑な苦みが口の中に広がった。
「ひさしぶりに帰省したんです。そしたら昨日、図書館であの子たちをみかけて」
「ちゃんと勉強してたかしら?」と言って小夜子さんは笑った。
目元に小さなしわが出来た。
長い髪を後ろで縛っていて首が細かった。
「横浜」と思った。
ランドマークタワー、赤レンガ倉庫、港の見える丘公園。
中華街。
女の子と行った。
何人かの女の子。
二年続いた娘も居れば半年続いた娘も居た。
三日で別れた娘も居た。
十五年。
それでも心が震えるほど好きになった事は一度も無かった。高いレンガの壁を作っていたから。
「どうかな。たぶん。勉強していたはずです。本当はよく見てなかった。でも、少し大人びて見えたけど」
「制服を着るともっと子供っぽくなるわ」
「平日のこの時間に、ここでアルバイトですか?」
「そうね、確かに平日のこの時間は学校に行ってる時間ね」
これ以上、立ち入れない。
そういう気がした。
これ以上、立入る権利も資格も度胸も無かった。
話題を変えよう。
「この店はいつから始めたんですか?僕が高校生の頃には無かった気がするんですけど」
「五年前よ。この町出身の主人と始めたの。どっか行っちゃったけど。彼はインテリアデザイナーでね、ずっと構想があったみたい。準備に一年かかったけど、二人で今までのものを全部捨てて始めたのよ」
鐘の音がした。
振り返るとラフな格好をしてカメラを抱えた青年が入ってきた。
カメラと言ってもかなり本格的なものだ。
仕事にも使える。
いや仕事に使っているんだろう。
そんないかにもカメラマン的風貌だった。
その男に向かって小夜子さんは「いらっしゃい」と言った。
男は店内を見まわし
「カズとミサは?」と言った。

