僕はアーケード街に向かった。
ここにもほころびがあった。
連続しているはずの屋根が抜け落ち、所々青空が見えた。
両側のシャッターは閉まり暗い通りが続いた。
古い看板は古いままだった。
誰からも見向きもされなくなった看板ほど悲しいものはない。
通り過ぎても誰も振り返らない。
でも僕は振り返った。
目新しい看板と出来たばかりの階段が目に入ったからだ。
看板は白地の板に黒で「蛍」と書かれていた。
階段は一直線に二階へと繋がっていて、その先に光が射していた。
一歩踏み出すと木のきしむ音がした。
出来たばかりでなじむ前の幼い音だ。
僕は一歩一歩、違った音を聞きながら階段を登った。
明るさが増した。
登りきると細長い通路にトップライトから燦燦と光が降り注いでいた。
その先に木製の扉があった。
小さく蛍と書かれていた。
コーヒーのいい香りがした。
僕はその重厚な扉を開けた。
鐘の音がした。
中に入るとカウンターにカップルが座っていて僕の方を振り返った。
中年の女性がカウンターの奥で顔を上げ、ハスキーな声で「いらっしゃい」と言った。
僕は三人の視線を集める形になった。
僕は視線が合わないようにテーブル席の方に目をやった。
「こちらへどうぞ」と女主人は言った。
カップルは僕の方をみて、こそこそと何かを話し背中を向けた。
ここにもほころびがあった。
連続しているはずの屋根が抜け落ち、所々青空が見えた。
両側のシャッターは閉まり暗い通りが続いた。
古い看板は古いままだった。
誰からも見向きもされなくなった看板ほど悲しいものはない。
通り過ぎても誰も振り返らない。
でも僕は振り返った。
目新しい看板と出来たばかりの階段が目に入ったからだ。
看板は白地の板に黒で「蛍」と書かれていた。
階段は一直線に二階へと繋がっていて、その先に光が射していた。
一歩踏み出すと木のきしむ音がした。
出来たばかりでなじむ前の幼い音だ。
僕は一歩一歩、違った音を聞きながら階段を登った。
明るさが増した。
登りきると細長い通路にトップライトから燦燦と光が降り注いでいた。
その先に木製の扉があった。
小さく蛍と書かれていた。
コーヒーのいい香りがした。
僕はその重厚な扉を開けた。
鐘の音がした。
中に入るとカウンターにカップルが座っていて僕の方を振り返った。
中年の女性がカウンターの奥で顔を上げ、ハスキーな声で「いらっしゃい」と言った。
僕は三人の視線を集める形になった。
僕は視線が合わないようにテーブル席の方に目をやった。
「こちらへどうぞ」と女主人は言った。
カップルは僕の方をみて、こそこそと何かを話し背中を向けた。

