雷の道「十五年ぶりの故郷で、初恋の彼女と再会した六日間」 ──記憶と現在が交差する、静かな再生の物語。

ブロンズを出ると、心地よい風が吹いてきた。
田舎の良いところは、住んでるところと繁華街が近くにあるということだ。
僕は夜風に誘われ歩いて帰ることにした。
堤防にさしかかるとひんやりとした空気に包まれた。

広い河川敷にカヌーが置いてあった。ここで汗を流す学生がいるんだ。
でも今は祭りのあとみたいにシンとしている。
彼らの熱量はどこにも見当たらない。
でも確実にここにあったはずだ。

僕は四艇あるひとつに触れてみた。
そして腰を降ろした。
この行為は彼らを冒とくしているのだろうか。
それとも彼らは練習の後、ボートを洗い、幌をかけ、僕と同じように腰を掛けて談笑しているのだろうか。

知らない世界の事はちっともわからない。
何が正しくて何が正しくないのか。
知ってしまえば、何てことはないのに。

そう、真実は案外単純で、真っすぐなのだ。

カヌーを漕いだあと彼らは水をボートにかけ、ワックスを塗り、明日に備えているのだ。
僕が何をしようとも彼らは気にしない。
人生は選択の連続なのだと誰かが言った。

僕がエリカと寝たとしたら、どうなっていたんだろう?
僕は誰に何を指し出さなくてはいけなかったのだろう。
エリカ。
君は間違っている。
どんな事情があるにしてもセックスはただ横になって終わらせるものじゃない。

僕が今、唯一間違いを正せるとしたら、それだけだ。
情けないことにそれだけなんだよ、エリカ。

僕は本当に成長したのかな?
彼女の美しく成長した顔を思い出そうとしたけど、霧がかかったように霞んでしまった。

過去は過去のままなんだと思った。