雷の道「十五年ぶりの故郷で、初恋の彼女と再会した六日間」 ──記憶と現在が交差する、静かな再生の物語。

「大学に進学して最初の夏休みに彼氏が出来たの。
同じ学部で同級生。
別府先生とはね、色々あったみたい。
別れる、別れない、みたいな話がね。
時間がかかったけど結衣と彼氏と先生と三人で話し合って、最後にはちゃんと別れたの。
そしてうちに連れてきたのよ。

結衣と会うのは一年ぶりだった。
普通の人だった。
とても別府先生と対等に渡り合うような人には見えなかった。
無口で平凡で、どうして彼なのかわからなかった。
ただ近くに居るというだけで選んだ人。
だから言ったの。
もうここには二度と来ないで。
結衣とは絶交だから、って。それから度々連絡があったけど無視し続けた。
そして結衣が大学を卒業してから三年経ったある日、結婚式の招待状が届いたの。
交通費と宿泊費と一緒に。
私も覚悟を決めたわ。たった一人の親友だから。
小さな教会でね、招待客もごくわずかだったわ。
でも結衣は幸せそうだった。
あんなに輝いてる結衣を見たのは初めてだった。
そして新郎はあの人だったのよ。
平凡でどこにでもいるあの彼。
きっとね、私の理解できない場所で深く繋がっていたんだろうなって思ったの。
それが結衣には彼と会った瞬間に理解できたんだろうなって。
私に一番欠けてる能力。女の直感ってやつね。
今は旦那さんの仕事でベトナムに居るわ。
子供も二人いてね。
年に二回、はがきが送られてくる。
暑中見舞いと年賀状。写真付きでね」

そう言うとエリカは一枚のはがきを僕に手渡した。
大人になった結衣と平凡な彼と、いかにも子供的な子供。
そしてやっぱり何も感じなかった。