図書館は昔から好きな空間だった。
本があるだけで安心した。
何でもできる、何処へでも行ける気になれた。
それが単なる勘違いでちゃんと努力しないと何処へも行けないとわかったのはずっと後の事なんだけど。
僕は大きなテーブル席に座った。
平日ということもあってがら空きだった。
遠くに受付が見えた。
利用者よりも職員の数の方がずっと多かった。
柄の付いたエプロンを着た女性が本を何冊も抱えて書庫とカウンターを行ったり来たりしていた。
僕はテーブルに資料を広げた。
隅の方に若い女の子が居たけど問題はないだろう。
多少の機密事項があっても、一般の人にはつまらない文字の羅列だ。
僕は方眼ノートを広げこれからの工程を大まかに描いた。
測量、地質調査、土壌調査、ライフラインの調査、開発協議、基本設計、実施設計、確認申請、その間に地権者の意見をまとめ近隣説明もしなくてはいけない。
今から着手しても着工まで、どんなに急いでも一年はかかりそうだ。
何か問題が起きればさらに半年延びる。
僕は作成した工程表に項目毎の問題点をまとめ、タブレットでスキャナーし本社に送った。
時計を見ると夕方になっていた。
いつの間にかテーブルの隅に居た女の子の隣に同じくらいの年の男の子が座っていた。
よく見ると分厚い参考書を傍らに何かをノートに書き込んでいた。
男の子が女の子の耳元で何かを囁いた。
女の子は邪魔しないでと言いたげに男の子をにらんだ。
男の子はあきらめたふりをして今度は女の子の耳に息を吹きかけた。
女の子も呆れた顔で微笑んだ。
二人の軽い性欲が伝わってきた。
二人は無関係な関係ではない。
男の子は女の子の肩に肩を寄せた。
女の子はちらっと僕の方を見て、人が見てるでしょ、と小声で耳元に囁いた。
こと、僕と美沙岐の関係に関して言えば、彼らの方が先輩なんだと思った。
彼らが今まで築き上げてきた関係はとても強固に濡れている。
僕と美沙岐の関係は、関係とさえ呼べないのかもしれない。
方向さえわからない。
昨日の幸福感がどこかへ行ってしまいそうだった。
美沙岐に会いたかった。
僕はこの土地に美沙岐と再会するために来たんだと思った。
運命。そういう大それた言葉を使いたくはないけど、もしもそうなら僕の取るべき行動はひとつだ。
「会って話したい」とメールした。
でも返信は無かった。
電話をしたけど繋がらなかった。
しばらくして「今日は無理」と返信があった。
電話をした事を少し後悔した。
美沙岐には美沙岐の生活があるんだ。
僕は思いあがっていたのかもしれない。
小学校六年間、ずっと同じクラスだっただけの友達。
それだけなんだ。
仕事をしよう。
そのためにこの町に来たんだ。
僕は洋介に電話をした。
あっさりとつながった。
ブロンズの開店時間に待ち合わせをした。
でも来たのはエリカだった。
本があるだけで安心した。
何でもできる、何処へでも行ける気になれた。
それが単なる勘違いでちゃんと努力しないと何処へも行けないとわかったのはずっと後の事なんだけど。
僕は大きなテーブル席に座った。
平日ということもあってがら空きだった。
遠くに受付が見えた。
利用者よりも職員の数の方がずっと多かった。
柄の付いたエプロンを着た女性が本を何冊も抱えて書庫とカウンターを行ったり来たりしていた。
僕はテーブルに資料を広げた。
隅の方に若い女の子が居たけど問題はないだろう。
多少の機密事項があっても、一般の人にはつまらない文字の羅列だ。
僕は方眼ノートを広げこれからの工程を大まかに描いた。
測量、地質調査、土壌調査、ライフラインの調査、開発協議、基本設計、実施設計、確認申請、その間に地権者の意見をまとめ近隣説明もしなくてはいけない。
今から着手しても着工まで、どんなに急いでも一年はかかりそうだ。
何か問題が起きればさらに半年延びる。
僕は作成した工程表に項目毎の問題点をまとめ、タブレットでスキャナーし本社に送った。
時計を見ると夕方になっていた。
いつの間にかテーブルの隅に居た女の子の隣に同じくらいの年の男の子が座っていた。
よく見ると分厚い参考書を傍らに何かをノートに書き込んでいた。
男の子が女の子の耳元で何かを囁いた。
女の子は邪魔しないでと言いたげに男の子をにらんだ。
男の子はあきらめたふりをして今度は女の子の耳に息を吹きかけた。
女の子も呆れた顔で微笑んだ。
二人の軽い性欲が伝わってきた。
二人は無関係な関係ではない。
男の子は女の子の肩に肩を寄せた。
女の子はちらっと僕の方を見て、人が見てるでしょ、と小声で耳元に囁いた。
こと、僕と美沙岐の関係に関して言えば、彼らの方が先輩なんだと思った。
彼らが今まで築き上げてきた関係はとても強固に濡れている。
僕と美沙岐の関係は、関係とさえ呼べないのかもしれない。
方向さえわからない。
昨日の幸福感がどこかへ行ってしまいそうだった。
美沙岐に会いたかった。
僕はこの土地に美沙岐と再会するために来たんだと思った。
運命。そういう大それた言葉を使いたくはないけど、もしもそうなら僕の取るべき行動はひとつだ。
「会って話したい」とメールした。
でも返信は無かった。
電話をしたけど繋がらなかった。
しばらくして「今日は無理」と返信があった。
電話をした事を少し後悔した。
美沙岐には美沙岐の生活があるんだ。
僕は思いあがっていたのかもしれない。
小学校六年間、ずっと同じクラスだっただけの友達。
それだけなんだ。
仕事をしよう。
そのためにこの町に来たんだ。
僕は洋介に電話をした。
あっさりとつながった。
ブロンズの開店時間に待ち合わせをした。
でも来たのはエリカだった。

