雷の道「十五年ぶりの故郷で、初恋の彼女と再会した六日間」 ──記憶と現在が交差する、静かな再生の物語。

「ああ。僕たちはこれから川を目指す」
「じゃあ、南へ」

「一路、南へ」
手を繋いだまま歩道橋を渡り、国道をそれて南へと向かった。
道は段々と暗くなった。
突き当たりに階段があり、登ると一気に景色が開けた。
いつもの川だ。
僕たちは堤防沿いを西に歩き、河川敷に降りて行った。
川のせせらぎが聞こえてきた。
月明かりに照らされて水辺が明るかった。
ここで少年なら川に向かって小石を投げるだろう。
でも投げたのは美沙岐だった。

「あはは。上手く飛ばない。どうやって投げてたんだろう?昔は上手だったのよ。水切りって言ってたっけ?三段は確実だったのに」
僕の一人になった右手はなるべく薄っぺらな石を探した。

「こうするんだよ」
僕の投げた石は低空飛行で水面に落下し大きく跳ね、水辺を何度も跳ねた。

「ジュンは昔から器用だったね。騎馬戦も工作もバレーボールも」

「そんなことはない。肝心な事は不器用なんだ」

「そういえばさっき、勘違いしたでしょ?歩道橋の上で私がどこに行くのって聞いたら、トラックの向かってる場所のこと話してたでしょ?」

「ちょっと考え事してた」

「私と居る時に?」

「美沙岐の事を考えてたんだ」
と僕は言ってもう一度石を投げた。

美沙岐も石を投げた。
だけど勢い余って、水面に両足が着いてしまった。
僕は声を上げて笑った。

「笑い事じゃないわ。靴の中に水がしみちゃった」
「大丈夫。乾かせばいい」

でも簡単にはいかなかった。
靴の中はぐっしょりと濡れていた。
しかも両足だ。
美沙岐はバランスを崩さないように僕の肩につかまり片足になって靴を脱いだ。
中から水がどっと出てきた。

「そんなにドジだったっけ?」

「意外とそうなのよ。しっかりしてるって見られるけど。どうしよう?」

僕は大きな石に腰を降ろした。美沙岐も座ろうとしたけど白いスカートが汚れそうだった。

「やめといたほうがいい。そのまま座ると大変な事になる」

僕は美沙岐の手を取って、
「ひざに座って」と言った。

美沙岐は僕のひざにゆっくりと腰を下ろした。