雷の道「十五年ぶりの故郷で、初恋の彼女と再会した六日間」 ──記憶と現在が交差する、静かな再生の物語。

現地に着くと見渡す限りの水を張った田んぼだった。
穏やかで複雑な大人の気配は感じられなかった。
未来永劫この風景が続く。
過疎の町で誰がいったい、この平穏で自然いっぱいの世界をコンクリートに作り替える事を思いつくだろう?この土地とは無関係の誰かが考えたからだ。
机の上で。

僕は計画地をくまなく歩きまわった。
衛星写真と公図を基に起こした配置図を検証した。
現場に立つと見えないものが見えてくる。
そしてあるはずのない水路を見つけた。
背中に汗が伝った。
でもまあ良い。
こういうことはよくある事だ。
その為の調査だ。


 現地を後にすると市役所に向かった。
ウェブ上の調査の裏付けをするためにね。
あらゆるデーターが全て更新されているとは限らない。
現場は生ものなんだ。
日々、移り変わっていく。
それにどこかに落とし穴があるかもしれない。

エントランスに入ると若くて綺麗な女の子が受付に座っていた。
僕はホッとした。
少なくとも僕の知り合いではない。
狭い町だ。
知り合いにはなるべく会いたくない。
特に高校の同級生には。
いちいち説明をしたくないからさ。
何故帰ってきたのか。
何故ずっと帰らなかったのか。

僕は誰からの誘いも断り、無視し続けてきたからね。
ちっぽけな男なんだよ。
僕は。