雷の道「十五年ぶりの故郷で、初恋の彼女と再会した六日間」 ──記憶と現在が交差する、静かな再生の物語。

「美沙岐に手紙を出すなんて初めてだよね。
突然でごめんね。
でも、突然はいつかやってくる。
そのいつかがやってきただけだ。

昨日、廊下ですれ違ったね。
振り返ってみたけど美沙岐は他の事に夢中だった。
僕はずっと後姿を見ていたんだ。
目が離せなくなるんだ。
体育館に居るときもそうだ。
美沙岐を見ていると胸がいっぱいになる。
練習がきついことを忘れてしまうくらい苦しくなる。
でも、美沙岐の視線の先はいつも別の所にある。
僕を見ることはない。
そしてまた胸が苦しくなるんだ。
こんな事がずっと続いている。
日を追うごとに増している。
今は夜で少し落ち着いているけど、朝になって学校に行って、美沙岐をどこかで探してる自分がいて、この気持ちをわかって欲しくてこれを書いている。

もう気付いてるとは思うけど僕は美沙岐の事が好きだ。
ずっと前から好きだった。
初めてなんだ。こんな気持ちは。

だからと言って今すぐどうにかなりたいとかそういうんじゃない。
いや、どうにかなりたいのかな。
僕は美沙岐を恋人にしたい。
将来、自立した大人になって美沙岐とつきあいたい。
美沙岐を僕だけのものにしたい。
必ず僕は美沙岐と対等につきあえる大人になって立派な大人になるから、その時までどうか一人でいて欲しい。
誰のものにもならずに」


これを姉が読む可能性があった事にぞっとした。
封をしておいて良かった。

そして美沙岐に出さなくて本当に良かったと心から思った。