雷の道「十五年ぶりの故郷で、初恋の彼女と再会した六日間」 ──記憶と現在が交差する、静かな再生の物語。


まるで記憶がなかった。
少し迷ったけど封を切った。
それは美沙岐にあてた恋文だった。
手に取ると昨日の事のように蘇ってきた。
何枚書いたんだろう。
書いては破り、破っては書いた。
どのくらいの時間を費やしたんだろう?
その徒労とも思える膨大な作業に。
出されるあてもない文章のために。

でもそれは、そのセリフは僕を支配した。
夜の闇に紛れて離さなかった。
ペンを取り机に向かった。
それは溢れるように次から次へと出てきた。
どこにあったのか、どこを彷徨っていたのか、皮膚の間から湧き出てきた。
それを両手ですくいあげた。
一滴もこぼさないように細心の注意を注いで。

今、手にしている手紙はその生き残りなんだと思った。