準備期間もなんとか過ごして今日は本番。

「柚月、今日菜月を頼む。」

え、今日は行かないと。あの子たちにいじめられる原因になる。

「今日はどうしても行かないと…!」

月斗にぃにお願いしてみる。ちゃんと言えば許してくれる。

「なんでだ?今日文化祭だろ。テストじゃないんだから。」

「文化祭の劇で主役なの…行かないと…」

いじめられる、までは流石に言えなかった。

「はあ、あのな、菜月は心臓悪いんだよ。発作起きたら困る。」

私だって、行かないとあの子たちが何してくるかわからない。

「代役くらいいるだろ?その子に連絡しろ。」

代役の子はいない。私はクラスの誰の連絡先も知らない。

黙って俯くと、月斗にぃは言った。

「だってじゃない。俺、行くからな。」

月斗にぃ…胃が痛んだ。

「柚月、ごめんね。」

菜月だ。さっきの会話は聞こえてないだろう。

「大丈夫だよ。菜月の看病も苦じゃないから。」

嘘ではない。家だと忙しいけど、嫌なわけではない。

学校は苦だ。それから逃れられるだけマシだ。

掃除や洗濯をしたり、菜月のご飯を作ったりして午前中は過ごした。

午後は勉強したり、菜月の様子を時々見にいった。

「ただいま。菜月、大丈夫だったか?」

やっぱり私より先に菜月。今は菜月の方が体が弱いから仕方ないけど。

3歳くらいで私たちは揃って喘息を発症し、小2の時に私が貧血を発症した。

小5で菜月が心臓病になり、今は服薬でコントロール中。

近々、手術をすることになるだろうと言っていた。

私はイヤホンをして勉強の続きをした。

月斗にぃが扉を開けた音が聞こえたが、聞こえないふりをした。

月斗にぃは2分くらいで出ていった。

私はベットに横になって目を閉じた。私の意識は引き込まれていった。