翌日の昼、休憩をもらったらしい月斗にぃが病室に来た。

「お前、なんで言わなかったんだよ!」

月斗にぃの言っていることはもっともだ。

「でもさ、ちゃんと言ったら月斗にぃは私を見てくれた?」

月斗にぃは当たり前のように即答する。

「もちろんだろ。妹が体調崩してるんだから。」

「ほんと?菜月が熱あったとしても?」

月斗にぃが一瞬言葉に詰まる。

「それは…優先順位をつけて先に菜月を見るかもだけど、柚月だってみる。」

「月斗にぃが仕事だったら?聞いてくれないんじゃない?」

文化祭の時だって、言えなかった私も悪いけど、聞いてくれなかった。

どうせ、目立ちたがってるとか思ってたんだろうけど。

「言わない。圭太とか礼央に仕事任せて休むよ。」

そんなことない。休んだって、みるのは菜月だけだろう。

「それ、お前の悪いところ。都合が悪くなったら黙るんだろ?」

正直言って、すごく傷ついた。そんなことないのに。

「そんなことないとか言いそうだな。なあ、お前俺に何を隠してるんだ?」

それを言いたくないから黙ってるのに。

「菜月だって今調子悪いんだよ。たかが胃潰瘍なんだからさっさと退院しろよ。」

ほらまた菜月って…

「なんで月斗にぃは菜月ばっかりなの?私はいらないの?」

「は?いつ言ったんだよそんなこと。」

月斗にぃは怒ってる。声から怒気が滲み出てる。

「行動からわかるよ!」

私だってそんなこと言われたらヒートアップしちゃう。

「お前はいつもそう!菜月の方が大変なんだよ!」

だからって私が全てを我慢する必要ないじゃん…

「少しは他の人のことを考えろよ!」

バチンと音がして、乱暴にドアが開け閉めされた。

平手を打たれたと気づくのは頬が痛み始めてからだった。