芳沢くんは私に堕ちない

思い立ったらすぐ行動。

私は、弁当の残りを美遥と真央に託して、教室を出た。

「恋杏ちゃーん!」

中庭に向かって廊下を歩いていたら、知らない別クラスの男の子に名前を呼ばれ、視線を向ける。

何人かの男の子たちがこちらを見て手を振っている。

私は、いつものようににっこりと口角を上げて、ひらひらと手を振り返した。

それだけで、男の子たちはとたんに大騒ぎになる。

「めっちゃ可愛い!」

「癒しだわ~いいな~青山、あんな可愛い子が彼女って」

「いや、それが昨日別れたらしいよ」

「え、まじ!?それなら俺もワンチャン!」

「無理だろ」

彼らの横を通り過ぎても、後ろからそんな会話が聞こえてきた。

園田さんになびかなかった芳沢芹司くんも、私のような愛嬌があるかわいい系には、彼らと同じようにときめいちゃうに決まっている。

男の子が女の子のどんな仕草が好きか、どんな言葉にドキドキするか、私は、ちゃんと熟知している。

階段を降り、すぐ角を曲がった渡り廊下に出て、中庭に目をやる。

確か、この辺りに……いた。