もうっと頬を膨らましながら、弁当に視線を落とす。
うちの家と昔から付き合いのある料亭のお弁当。
毎日、朝一番にお店の人がうちに届けてくれるそれは、お店で食べるのと変わらない味。
小さく仕切られた中には、彩りのいいおかずが並んでいる。
卵焼きに、鮭の西京焼き、星型の人参が入った煮物。
まるで小さな懐石料理。
うちのパパは、不動産やホテル、商業施設などの事業を幅広く手がけている星宮グループの社長。
だから、家のことはほとんどお手伝いさん任せ。
私の身の回りのお世話も全部プロの仕事だ。
こういうお弁当も、正直言って小さい頃からずっと当たり前。
そう、私は、れっきとした超お嬢様。
それだけでも周りは羨むって言うのに、そんな私は超超超顔の整った美少女。
私と仲良くなりたがる女の子も、付き合いたがる男の子も星の数いる。
でも……。
もう、ずっとずっと、モヤモヤしている。
次こそは手に入るかもって期待するけど、やっぱり掴めなくて、苦しい。
かわいそうなのは、青山くんじゃなくて、私。
こんな気持ちを零せば、美遥と真央に呆れられてしまうんだろうけど。
「あ、芳沢くん」
真央が、突然教室の窓に視線を向けてそう呟いた。



