芳沢くんは私に堕ちない


芳沢くんがどんなにスカしていたって、所詮は年頃の男の子。

私みたいなかわいい女の子から、もっと"そういう"アピールされちゃったら、頭よりも先に身体が反応しちゃうはず。

なんだかんだ嫌いな私にときめいて、好きになる。
私の虜になった芳沢くんを、華麗に振る!!

そうなったら、ものすごーくすっきり!

"何の苦労もしたことないでしょ。かわいいかわいいって周りからチヤホヤされて、欲しいものは全部与えられて"

"星宮さんが、恋愛に対して夢物語を語れるのも、恵まれているから"

"ってことで、星宮さんがどんなアプローチしてこようが俺には通じないから"

なんて、散々、人をバカにした発言をしていたのだから、そんな彼を振ったってバチは当たらないはず。

私ってば優しいから、芳沢くんも結局、他の男の子と同じだって思い知らせてあげるんだ。

「……ねぇ、芳沢くん。起きてる?」

芳沢くんの腕に触れながら、少しだけ顔を近づけて声をかけてみた。

「……なに?」

案の定、不機嫌そうだけど負けない。

「起こしちゃってごめんね?花川さんからお菓子もらったの。芳沢くんもよかったらって。はい、あーん♡」

私はそう言いながら、もらったお菓子の小袋から、チョコが入った細長いプレッツェル菓子を芳沢くんに差し出す。

「……いや」

「甘いの苦手?それとも、意識してる?」

「フッ、くだらな」

あの冷たい目。

見下すように、鼻で笑いながらそう言われて、なぜか顔が熱くなり、たちまち心拍数が上がる。

まただ。
またこれだ。

なんなのよ……。