芳沢くんは私に堕ちない



最悪……。
最悪、最悪、最悪!!

チラッと横目で隣を確認する。

ジャージ姿の彼は、こちらには見向きもしないで窓の外にずっと顔を向けている。

こっちのことなんて見なくていいんだけど!

なんでよりによって……バスの席まで隣なの!?

遠足当日。

バスの中は、教室とは違う雰囲気でみんなソワソワウキウキしている。

私だって、去年まではそうだった。
このイベントは、出会いのきっかけにもなるから。

それなのに……。

「星宮さん、食べる?」

前に座る花川さんが、こちらを向いてお菓子の袋を差し出してくれた。

「あ、ありがとう!これ大好き!」

「よかった〜!芳沢くんにもあげて」

「……うん!」

花川さん、本当は芳沢くんと座りたかったんだろうな。
変わってあげてもいいんだけど。

というか、うん、と返事したのはいいものの、話しかけたくない。私のことを嫌いと言い放った人間だ。

ムカつく。

そもそも、芳沢くんだって、嫌いな私と話したくないだろうし。

……いや、待てよ?

これって、逆に芳沢くんを落とす絶好のチャンスなんじゃない?