芳沢くんは私に堕ちない


「芳沢くんと星宮さんと同じ班って……!顔面偏差値ヤバすぎでしょ!!」

あの最悪な日から2週間。
ゴールデンウィーク明けの5月中旬。

ようやく、忘れられてきたと思ったのに。

私の座る真正面には、二度と見たくなかったはずの顔面が涼しい顔をして座っている。

「よろしくね、小暮(こぐれ)さんに花川(はなかわ)さん。……星宮さん」

彼に名前を呼ばれ、小さくキャー!と喜び合っている小暮さんと花川さん。

チラッと視線を正面に向けると、微笑ましそうにふたりを見つめていた彼と一瞬目があってすぐ逸らした。

この学校名物、春の学年交流遠足。
うちの学校は、3年間クラス替えがない。

その代わり、進級して1ヶ月が経つとこうしてクラスか関係なく、ひと学年の生徒をシャッフルして、班を組まされる。

それが、よりにもよって……芳沢芹司と同じ班になるなんて。最悪すぎる。

今は、班のメンバーとの顔合わせと簡単な打ち合わせ中。

「ねぇ、星宮さん、バスの席、俺と隣じゃダメかな?」

「うわ、お前ずりぃぞ!俺がいいよね、星宮さん!」

名前を呼ばれて、斜め前に座るふたりの男の子に目を向ける。

ええっと、確か、堀田くんと南くん、だったっけ。

ここではどう立ち回る方が正解だろう。
どうしたら、小暮さんや花川さんの鼻にもつかず、場の空気も壊さずに済む?

いつもならすぐに対応できるはずなのに、目の前に芳沢芹司がいると思うと、どうも調子が狂う。