芳沢くんは私に堕ちない


「恋杏!!芳沢くんとめっちゃ急接近してたんじゃない!?って……」

「なんであんたそんな顔赤くなってんの……?」

「やっぱり、あの超絶イケメンを目の前にして惚れたか!?」

美遥と真央が待っている教室に戻ると、私の姿を見たふたりがおかしなことを言い出した。

……私の顔が、赤い?
あの芳沢芹司に惚れる…?
まさか。

「何バカなこと言って……」

そう反論しかけた私に、真央が無言でコンパクトミラーを向けてきた。

へ……。
そこには、自分でも見たことのない、頬が真っ赤に火照った私が映っていた。

「っ、これは!芳沢芹司にムカついているからよ!」

私は、そう言いながら真央の手も覆うようにミラーをすぐさま閉じた。

彼は、私のことをあーだこーだと罵ったのだ。
好きになるわけ……。

「……何をそんなに必死に……お、さては振られたな?」

「やっぱり恋杏ちゃまでも無理か〜」

むっかー!!

「落とす落とさない以前の問題!あの人、性格悪すぎる!論外っ!」

「ちょ、ちょっと恋杏、落ち着いて。何言ってんの?芳沢芹司が性格悪いって……そんなことあるわけないでしょ」

「そうだよ、恋杏。振られたんなら素直に認めな?往生際が悪いぞ」

真央はそう言いながら、食後のアップルジュースをチューとストローで飲む。

……う、嘘じゃないのに……!

「仮に、もし芳沢くんの性格が本当はクソ悪かったとしても、誰も信じないんじゃない?」

はっ……!

"お好きにどうぞ"

そうか、芳沢芹司が余裕そうにああ言ったのは、私が本性をみんなにバラしたって、誰も信じないってわかっていたから……。