芳沢くんは私に堕ちない


「星宮さんが、恋愛に対して夢物語を語れるのも、恵まれているから」

「……っ」

何よ……それ。

「ってことで、星宮さんがどんなアプローチしてこようが俺には通じないから」

芳沢くんはベンチから立ち上がり、私のことを見下ろす。

「時間、大事にしな」

わざとらしい満面の笑みをつけてきた彼は、私に背を向けてスタスタと校舎へと向かっていく。

キィ〜〜!!
何その態度!!
ムカつく!!

「みんなに、芳沢くんの本性バラしちゃうから!」

立ち上がり、芳沢くんの背中に向かって声をぶつけると。

「お好きにどうぞ」

こちらを見ずに返ってきた声に、呆然と立ち尽くすことしかできない。

みんなの知らない、芳沢くんの顔。

"嫌いなんだよね"

琥珀色の瞳に捉えられたまま呟かれた芳沢くんの冷たい声が、まだ脳裏で響いている。

きっと、みんなは知らない彼の姿。