芳沢くんは私に堕ちない


芳沢くんは、ゆっくり顔を離し、そのまま至近距離でまっすぐ私の目を見つめてきた。

「俺さ、星宮さんのこと嫌いなんだよね」

「えっ……」

ドキン。

確かに、自分の胸が大きく音を鳴らしたのがわかる。
意味わかんない……。

嫌い。

今、芳沢くんは、確かにそう言った。

面と向かって、男の子に嫌いなんて言われたのは、生まれて初めて。

一方的に嫌いなんて言われたら、普通ならムカつくはずなのに。

なぜか、私の心臓はドキドキとうるさく響いている。

いや、違う。
これは、びっくりしているだけ、今までに味わったことないことで動揺しているんだ。

私は、心臓の音を落ち着かせるように、さりげなく胸に手を当てる。

自分の心拍数に動揺する私とは真逆で、目の前の芳沢くんは、真顔のままじっと私を見ている。

ものすごく……冷たい目。

耐えきれず、スッと目を逸らした。
目を見られたら、全部見抜かれて、呑まれてしまいそうで。

視線を遠くに移して、再び口角をあげる。

「き、傷つくな〜そんな面と向かって嫌いだなんて……なんでそんなこと言うの?」

笑顔を崩さないように投げかけると、芳沢くんは冷静に続けた。

「何の苦労もしたことないでしょ。かわいいかわいいって周りからチヤホヤされて、欲しいものは全部与えられて」

もう、芳沢くんには、爽やかの"さ"の字もない。