芳沢くんは私に堕ちない


気を取り直して、口を開く。

「関係……あるよ?私、芳沢くんのことちょっと気になってるから」

「……」

「あ、ごめん。気になってるって、そういう意味じゃないよ?ほら、芳沢くんが誰とも付き合わないって噂聞いたから。すごくモテるのに、どうしてなのかな〜って」

顎に人差し指を添えて、瞳を上に動かしながら、チラッと彼の反応を伺う。

「……そんな暇ないだけ」

「暇って……」

「恋愛って自分の欲求のことを考える時間のある人がすることだから。いいと思うよ。時間の使い方は人それぞれ。だけどそれを強要して欲しくないな」

えぇ?
なんか、芳沢くん、当たり強くない?

全然、性格良いと思えないんだけど。

私のこと、暇人だって言いたいわけ??
別に、強要しているつもりもないし。

それに……。

「それは間違ってるよ、芳沢くん」

あれ……どうしたんだろう私。

「……」

いつもなら、男の子の言うことに多少違和感があっても、ニコニコ笑顔でテキトーに相槌を打つ。

なのに……止まらない。

「恋って、自分の時間を好きな人のために使いたくなるの。その人のためなら犠牲と思わない、その時間が愛おしくなるの。それが人を好きになるってことで……」

「……ふーん。で?星宮さんは、そういう恋、したことあるの?俺にはそんな風には見えないけど」

「……っ」

やっとこっちを向いたと思ったら、思ったよりも距離を詰められて、息が止まった。

「そういうの、なんていうか知ってる?」

「えっ……」

「幻想」

突然、芳沢くんがさらにこちらに迫ってきたかと思えば、耳元でそう呟かれた。