芳沢くんは私に堕ちない


「……それでさ、今日、俺の親、帰ってくるの遅いんだよね」

「え?」

隣を歩いていた青山くんが、チラッと横目で私を見る。

「だから……うち来ない?」

その顔。
……知ってる。

髪の隙間から見える耳の上が、うっすら赤くなっていて、視線はどこか落ち着かなくて。

少しだけ早くなる歩くスピード。

あーあ。
明日で3ヶ月になりそうだったのに。

結局……青山くんも、今までの男の子たちと同じか。

はぁ、と心の中でため息をつき、私は、一歩大きく前に出て、彼の正面に立った。

そして、満面の笑みを向けて言う。

「別れよっか、私たち」