17年後、七夕で。

「あ、晴太。おはよう。昨日は大丈夫だったか?」
「何が?」
翌日。学校に行くと唱太に心配そうに聞かれた。……本当に何が?
「テストだよ。あの点で、親に怒られなかったか?オレはすげー怒られたぜ」
「あー、そういや見せてねぇ」
「え⁉お前マジか!」
昨日はあのまま部屋に引きこもってたからな。ご飯は母親が運んできてくれて食べたけど。……俺の母親、優しすぎるだろ。
「な、お前知ってるか?今日このクラスに転校生が来るらしいぞ」
「は?転校生?」
なんでこんな中途半端な時期に?理解ができん。まぁそりゃ何かしらの事情はあるのだろうけど。
「なんかすごい美人らしいぞ」
「へー」
はっきり言って120%興味ない。可愛かろうがなんだろうが俺の一番は夕莉だし。
「おい、席つけー」
先生が入ってきて、みんな席につく。きっとこの後転校生が紹介されるのであろう。
「澤田さん、どうぞー」
……ん?澤田?なんか聞いたことある苗字だな。まぁ別に澤田なんて珍しくもなんともないし、気のせいだろう。
ガラガラッ。
おおっ。教室からざわめきが起きる。入って来た女は確かに美少女だった。一度も太陽を浴びたことがないような白く透明な肌。腰まである長く綺麗な茶色の髪。マスカラをつけたのかと思うくらい長いまつ毛にぱっちりとした目。
「澤田花澄と言います。学校をエンジョイしに来ました。よろしくお願いします」
わぁぁぁぁ!まるで芸能人が来たかのように男子から歓声が上がる。おいおい、どんだけ興奮してんだよ。
確かに声も綺麗だったし、優しそうな見た目でもあるが、俺のタイプじゃ――⁉
澤田花澄?さわだかすみ……?
今、そう言ったよな?
……あ!思い出した!
昔病院でずっと一緒に遊んでた、かすみちゃんだ!
うわ。こんなところで再会するなんて。思ってもみなかったわ。
てことは、退院できたんだな。よかった。
俺の入院は大したことなかったけど、かすみちゃんはそうじゃなかったらしいから。
どうしよう。話したいな。
……。
夕莉が死んでから、誰かと話したい、って自分から思うのはこれが初めてだった。
でもどうしよう。人前でかすみちゃんて呼ぶのはためらいがあるな。
「ハルくん‼」
頭の中でぐるぐる考えていたら、かすみちゃんに名前を叫ばれた。――っておーい⁉
こ、こんなたくさん人のいる前で名前を呼ぶな‼しかも半分以上の人が俺と夕莉が付き合っていたことを知っている。浮気してたとか変な勘違いが起きたら嫌だ。
「え、合戸くんと澤田さんって知り合い?」
高橋が不思議そうに言う。やべー、高橋も知ってたよな確か。昨日唱太に教えられてたし。
「うん!昔一緒に遊んだことがあるの」
「ふーん」
かすみちゃんの返事に、つまらなそうに返す高橋。なんだなんだ……?
「と、とりあえず、澤田さん、席ついて」
二人のバチバチした視線を感じたのか、先生が言う。
高橋、なんであんなにかすみちゃんに挑戦的だったんだ?