中学の廊下を歩くたび、 誰かが小さくつぶやく。


「お地蔵さん、通りま〜す」

「なむなむ〜」


誰が言ったかなんて、もう覚えていない。

でもその声だけは、耳の奥にずっと張り付いて離れない。


私はしゃべるのが苦手だった。

というより、喋ろうとすると喉の奥がギュッと締まるようになったのは、いつからだったっけ。

笑おうとしたこともある。

口角を上げて、明るいふりをした。

でも、「うわ、無理に笑っててキモい」って、みんなに笑われた。

そしたらもう、笑えなくなった。いや、笑い方を忘れた。