朝ごはんを終え、玄関で靴を履く朔都。
「いってきまーす!」

都花はランドセルを肩にかける手を直しながら微笑む。
「行ってらっしゃい、朔都。忘れ物ない?」
「大丈夫!」

理人も一緒に玄関に立ち、見送る
「……ほんと、お前元気だなー」
「今日は友達とサッカーするんだー!」

家の前には、すでに友達が集まっていて、元気に話している。
「おはよー、朔都!」
「おはよー!」

朔都は手を振って駆け寄る。友達と一緒に学校に向かって駆けていく足音が、朝の静けさに弾む。
「行ってきます!」
「行ってらっしゃい!」
理人も手を振り返し、都花も笑顔で見送った。

玄関が静かになると、都花はくるりと振り返り、
「次は仁奈だね」
と言って笑った。

仁奈はリュックを背負いながら、まだちょっと眠そうな目をこすっている。
「おねえちゃん、だっこー」
「はいはい。今日はお歌の練習あるんでしょ?」
「うん! あとね、おやつはクッキー!」

理人が帽子を手に取り、仁奈の頭にちょこんと乗せる。
「よし、準備完了。今日は転ばないようにな」
「はーい!」

保育園の門まで行くと、先生が玄関先で出迎えてくれた。
「おはようございます、都花さん、理人くん、仁奈ちゃん」
「おはようございます!」
仁奈は元気にあいさつして、小さな手をぶんぶん振る。

「今日はお歌の日なんですよ」
先生が微笑むと、仁奈は少し照れたように笑いながら言った。
「『おおきなくりのきのしたで』うたうの!」
「そうなんだ、頑張ってね」
都花が頭をなでると、仁奈はにっこり笑って先生のほうへ歩いていった。

理人と都花は、先生に軽く会釈をして園をあとにする。
「……仁奈ももうすっかり園の子だな」
「うん、最初は泣いてばかりだったのにね」

二人は並んで歩きながら、自分たちの高校へ向かう道を進む。
朝の空気はまだ冷たく、校舎のほうからは吹奏楽の練習の音が小さく聞こえてくる。