ピリリリリ。ピリリリリ。

目覚まし時計の針は、朝の5時半を指していた。
昨夜は遅くまで宿題をしていたせいで、体が重たい。けれど、グッと堪えて覚悟を決める。

「……おきるかー！」

まだ夢の中にいる弟妹を起こさないように、隣のベッドの相棒──幼馴染を呼ぶ。

「理人、りひとー。おきてー！　りーひーとー！」

もぞもぞと布団が動いて、寝ぼけた顔がのぞく。
浴衣の襟がゆるんでいるせいか、少し不機嫌そうなのに妙に整った顔をしていて、思わず「なんかずるい」と心の中でつぶやいた。

「……あー、起きるか。おはよ、都花(いちか)。」

ここまで聞くとまるで夫婦か恋人みたいだけど、断じて違う。ただの幼馴染だ。

──両親同士が昔からの幼馴染で、海外暮らしの自由人。
さすがに幼い子どもを放ってはおけなかったらしく、私たちは祖父母の家で一緒に育った。
今は祖父母の年齢のこともあって別々に暮らしているけれど、生活の名残はいまだに濃い。
たとえば、寝るときの浴衣や普段着の和服。それは全部、祖父母の影響だ。

「おはよ、理人。」