「うわぁ……」
いつもの切れ長な瞳は倍以上に見開かれている。
それが新鮮で思わずふっと笑ってしまった。
モルフォと目が合う。
「何笑ってんだよ」
「いや、別に。ってかこれ取ろうかな」
長い黒髪を引っ張る。
サラリと頭から離れ、クラスのマドンナは居なくなった。
着ていた上着を腰に巻いてスカートを脱ぐ。
下に短パンを履いているから問題はないだろう。
見た目はすっかりボーイッシュな女の子。
「……なんで顔赤いの?」
「逆になんで今着替えてんの!?」
「別に全裸になるわけじゃないじゃん」
「そういう意味じゃなくてさ!!」
起こっているみたいだがイマイチよく分かっていない自分がいる。
意外と大きい鞄にスカートを畳んで入れてからモルフォと目を合わせた。
学校より柔らかい瞳は青く輝いている。
鼓動が早くなる。
「モルフォってさ、好きな人居るの」
一体何を聞いているんだろうか。
私は彼に対して友情以上の感情はない。
けれど気になってしまった。
クラスの女子や他のクラスの女子から黄色い悲鳴を挙げられて愛想を振りまく彼。
最近瑠璃と親しげに話し込む彼。
いや、違う。
そんな理由じゃなくて……あれだよ。
一学期が終わる前、同じクラスの氷紋緑って子が告白してたんだ。
男子の間では守りたくなる女子NO.1に選ばれたらしい子。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
生徒会の仕事が終わって帰ろうとした時だった。
今日のお昼は変わった場所で食べたいという瑠璃の要求で校舎裏まで行ったのだ。
ガランとしていて丁度燕くんがサンドイッチを口にいれようとしているところだった。
彼は花壇の花をスケッチしようとここまで来たらしい。
その後は3人でお昼を食べてゆっくり過ごした。
邪魔かと思ったけどいて欲しいと2人に言われてしまっては留まった方がいいだろう。
で、なんとそこにハンカチを忘れてしまったことを放課後になってから気づきアニメや漫画で1番ドキドキしそうな現場に出くわしてしまった。
「あのぉ……こちょうくん。よかったらわたしとぉ〜おつきあいしてほしいなっ!どうかな?」
どこからそんな声が出せるんだという甘ったるい音。
立ち聞きは悪いと思うが妹から貰ったハンカチを放置して帰りたくもない。
「ごめんね、好きな人がいるんだ。だから付き合えない」
凛とした声は脳をゆったりと満たす。
「うぇぇ!?すきなひとってぇだれだれ!?みどりよりかわいい?」
「うん、すっごく可愛い」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
その日から気になって夜しか眠れない。
「えっ……と……なんで急に」
目を見開きふるふると首を動かす。
「ごめん、告白現場遭遇しちゃった」
べっと舌を出す。
明らかに動揺していた彼は力が抜けたように笑った。
「なんだ。……いるよ、すっごく可愛いお姫さまがね」
思わずドキッとした。
溢れる笑みが人の心を虜にさせる。
「お姫様かぁ」
そんな言葉しか出てこなかった。
どんな人なんだろう。
きっとめっちゃ金持ってて、ビビるぐらいの美人だろうな。
ってなると芸能人……いや、瑠璃の言ってた幼なじみとの展開もありえる。
……ちょっと考察してみるか。
観覧車から降りて、メリーゴーランドの列に並ぶ。
やっぱり子供が多くて夏休みだということを実感させられる。
「私メリーゴーランド好きなんだよね。わちゃわちゃしてる動物達が可愛くてさ」
「なるほど……なんか童話に出てきそうだね」
「お姫様が居れば完璧だったね」
そんな戯言を彼は見逃さなかった。
「居るじゃないか」
「あ?」
「ほら、乗れるよ。行こう」
急にエスコートされて脳は混乱している。
けど、悪くはなかった。
どうしてか「お姫様が居る」という発言に顔が熱くなる。
少し高い位置で止まっている馬にまたがった。
モルフォは隣のカエルに座っている。
音楽と共にゆっくり回転を始める。
「動かないやつもあるんだね」
指を指したニワトリは上下に動かず固まっている。
「うん。モルフォはどっちが好き?」
「僕は動く方が好きかな。メリーゴーランドって感じがするから」
「たしかにね」
ふふっと互いに笑いあって回転は止まった。
いちばん高い所で停止したせいで微妙に足がつかない。
勢いをつけて飛ぼうかと迷ったら、手を差し出された。
「危ないことしないで」
「ありがとう」
足に負担がかからずに降りれた。
慣れているのだろうか。
動きがスムーズだ。
出口へ向かうと甘い匂いが鼻腔をくすぐった。
「めっちゃいい匂いする」
「キャラメルポップコーン……欲しい」
「行こうか。僕もチュリトス食べたい」
可愛いポップコーンバケットに入った黄金の甘味を口に入れる。
甘くて頬が緩む。
「美味しい!」
「だね〜モルフォ、口開けて」
がパッと空いた口に2、3個入れる。
サクッサクッといい音が鳴った。
「も〜らいっ」
チョコ味のチュリトスを齧る。
「あっ齧りかけだったんですけど」
「今更?」
スマホが震える。
『もうそろそろお昼だからレストラン入らない?』
「瑠璃から」
ポップコーンを掴んでいない手でスマホを触る。
「とりあえず合流しようか」
「その前にトイレ行ってきていい?マドンナにならなくちゃ」
髪とズボンを触ってアピールアピール。
「分かった、待ってる」
ニコッと甘い笑みで手を振ってくる。
返さないのも失礼かと思って振ってみた。
さっきよりも笑顔になる彼を見てクスッと笑ってしまう。
化粧は元から薄目だったし時間はかからなかった。
「お待たせ」
「全然待ってないよ」
モルフォの方に向かおうと歩き出す。
瞬間、体が左にズレた。
「危ないっ」
まるで抱きしめあっているかのような構図になる。
これが少女漫画なら厚い胸板に顔を埋める展開になるだろうが、そうはならない。
何故なら身長が私の方がちょっと高いからだ。
「大丈夫?」
「全然。ちょっと高い靴履いてたからよろけただけ」
「そっか」としょげるモルフォは濡れた子犬とでも表現したらいいのだろうか。
私より大きい手をぎゅっと握る。
しっとりと暖かい。
男子とは思えない綺麗な手が骨ばっているのに違和感がある。
ちらりと見た彼の顔はほんのり赤い。
「転ばないようにエスコートしてよ」
意地悪く笑うとモルフォも握り返してきた。
「もちろん、お姫様」
「私はお姫様じゃないよ」
それにモルフォは笑って返した。
いつもの切れ長な瞳は倍以上に見開かれている。
それが新鮮で思わずふっと笑ってしまった。
モルフォと目が合う。
「何笑ってんだよ」
「いや、別に。ってかこれ取ろうかな」
長い黒髪を引っ張る。
サラリと頭から離れ、クラスのマドンナは居なくなった。
着ていた上着を腰に巻いてスカートを脱ぐ。
下に短パンを履いているから問題はないだろう。
見た目はすっかりボーイッシュな女の子。
「……なんで顔赤いの?」
「逆になんで今着替えてんの!?」
「別に全裸になるわけじゃないじゃん」
「そういう意味じゃなくてさ!!」
起こっているみたいだがイマイチよく分かっていない自分がいる。
意外と大きい鞄にスカートを畳んで入れてからモルフォと目を合わせた。
学校より柔らかい瞳は青く輝いている。
鼓動が早くなる。
「モルフォってさ、好きな人居るの」
一体何を聞いているんだろうか。
私は彼に対して友情以上の感情はない。
けれど気になってしまった。
クラスの女子や他のクラスの女子から黄色い悲鳴を挙げられて愛想を振りまく彼。
最近瑠璃と親しげに話し込む彼。
いや、違う。
そんな理由じゃなくて……あれだよ。
一学期が終わる前、同じクラスの氷紋緑って子が告白してたんだ。
男子の間では守りたくなる女子NO.1に選ばれたらしい子。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
生徒会の仕事が終わって帰ろうとした時だった。
今日のお昼は変わった場所で食べたいという瑠璃の要求で校舎裏まで行ったのだ。
ガランとしていて丁度燕くんがサンドイッチを口にいれようとしているところだった。
彼は花壇の花をスケッチしようとここまで来たらしい。
その後は3人でお昼を食べてゆっくり過ごした。
邪魔かと思ったけどいて欲しいと2人に言われてしまっては留まった方がいいだろう。
で、なんとそこにハンカチを忘れてしまったことを放課後になってから気づきアニメや漫画で1番ドキドキしそうな現場に出くわしてしまった。
「あのぉ……こちょうくん。よかったらわたしとぉ〜おつきあいしてほしいなっ!どうかな?」
どこからそんな声が出せるんだという甘ったるい音。
立ち聞きは悪いと思うが妹から貰ったハンカチを放置して帰りたくもない。
「ごめんね、好きな人がいるんだ。だから付き合えない」
凛とした声は脳をゆったりと満たす。
「うぇぇ!?すきなひとってぇだれだれ!?みどりよりかわいい?」
「うん、すっごく可愛い」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
その日から気になって夜しか眠れない。
「えっ……と……なんで急に」
目を見開きふるふると首を動かす。
「ごめん、告白現場遭遇しちゃった」
べっと舌を出す。
明らかに動揺していた彼は力が抜けたように笑った。
「なんだ。……いるよ、すっごく可愛いお姫さまがね」
思わずドキッとした。
溢れる笑みが人の心を虜にさせる。
「お姫様かぁ」
そんな言葉しか出てこなかった。
どんな人なんだろう。
きっとめっちゃ金持ってて、ビビるぐらいの美人だろうな。
ってなると芸能人……いや、瑠璃の言ってた幼なじみとの展開もありえる。
……ちょっと考察してみるか。
観覧車から降りて、メリーゴーランドの列に並ぶ。
やっぱり子供が多くて夏休みだということを実感させられる。
「私メリーゴーランド好きなんだよね。わちゃわちゃしてる動物達が可愛くてさ」
「なるほど……なんか童話に出てきそうだね」
「お姫様が居れば完璧だったね」
そんな戯言を彼は見逃さなかった。
「居るじゃないか」
「あ?」
「ほら、乗れるよ。行こう」
急にエスコートされて脳は混乱している。
けど、悪くはなかった。
どうしてか「お姫様が居る」という発言に顔が熱くなる。
少し高い位置で止まっている馬にまたがった。
モルフォは隣のカエルに座っている。
音楽と共にゆっくり回転を始める。
「動かないやつもあるんだね」
指を指したニワトリは上下に動かず固まっている。
「うん。モルフォはどっちが好き?」
「僕は動く方が好きかな。メリーゴーランドって感じがするから」
「たしかにね」
ふふっと互いに笑いあって回転は止まった。
いちばん高い所で停止したせいで微妙に足がつかない。
勢いをつけて飛ぼうかと迷ったら、手を差し出された。
「危ないことしないで」
「ありがとう」
足に負担がかからずに降りれた。
慣れているのだろうか。
動きがスムーズだ。
出口へ向かうと甘い匂いが鼻腔をくすぐった。
「めっちゃいい匂いする」
「キャラメルポップコーン……欲しい」
「行こうか。僕もチュリトス食べたい」
可愛いポップコーンバケットに入った黄金の甘味を口に入れる。
甘くて頬が緩む。
「美味しい!」
「だね〜モルフォ、口開けて」
がパッと空いた口に2、3個入れる。
サクッサクッといい音が鳴った。
「も〜らいっ」
チョコ味のチュリトスを齧る。
「あっ齧りかけだったんですけど」
「今更?」
スマホが震える。
『もうそろそろお昼だからレストラン入らない?』
「瑠璃から」
ポップコーンを掴んでいない手でスマホを触る。
「とりあえず合流しようか」
「その前にトイレ行ってきていい?マドンナにならなくちゃ」
髪とズボンを触ってアピールアピール。
「分かった、待ってる」
ニコッと甘い笑みで手を振ってくる。
返さないのも失礼かと思って振ってみた。
さっきよりも笑顔になる彼を見てクスッと笑ってしまう。
化粧は元から薄目だったし時間はかからなかった。
「お待たせ」
「全然待ってないよ」
モルフォの方に向かおうと歩き出す。
瞬間、体が左にズレた。
「危ないっ」
まるで抱きしめあっているかのような構図になる。
これが少女漫画なら厚い胸板に顔を埋める展開になるだろうが、そうはならない。
何故なら身長が私の方がちょっと高いからだ。
「大丈夫?」
「全然。ちょっと高い靴履いてたからよろけただけ」
「そっか」としょげるモルフォは濡れた子犬とでも表現したらいいのだろうか。
私より大きい手をぎゅっと握る。
しっとりと暖かい。
男子とは思えない綺麗な手が骨ばっているのに違和感がある。
ちらりと見た彼の顔はほんのり赤い。
「転ばないようにエスコートしてよ」
意地悪く笑うとモルフォも握り返してきた。
「もちろん、お姫様」
「私はお姫様じゃないよ」
それにモルフォは笑って返した。

