君と始める最後の恋

 披露宴中、演出としてブーケトスを行うらしい。と言ってもトスはしないので贈呈式みたいな感じらしいけど、誰か沙羅さんからブーケを受け取れる幸福な方がいるらしく私には無関係だと目の前のシャンパンを軽く口付けていた。

 ブーケトスしないのかなとは思っていたけど最近の結婚式ではする割合も下がっているらしいが、それでも、いまだに私の憧れではある。

 そんな考え事をしているとブーケ贈呈のタイミングで「桜庭 郁さん、前にいらしてください!」と司会の方に呼ばれてしまう。

 シャンパンを口にしていて思わず吹き出しそうになったのを必死に飲み込んだせいで咳き込んでしまった。


「何してんの、落ち着きなよ。」


 隣に座る先輩が呆れた表情で言っていた。

 まさか私だとは思わなかったし。と思いながらも、名前を呼ばれて無視するわけにはいかず、恐る恐る前に出ると沙羅さんが優しく微笑んで手元にはすごく綺麗なブーケがある。

 そんなの、私貰えないよ。沙羅さん達をお祝いしたい気持ちは嘘じゃないけれど、こんなおめでたい日に一ノ瀬先輩と沙羅さんだったら…とか、気持ちを伝えられていたらなんて考えてこの場に来てしまったのだから。


「沙羅ちゃん、類くん素直じゃないけどよろしくね。」


 そう言いながら手元にブーケを渡される。この会話は周りには聞こえていない。


「よ、よろしくって。私達そんなんじゃ…。」

「うん、でも2人はいずれそうなるんじゃないかなって気がしてるの。願望かもだけどね。」


 そんな言葉を聞いて手元にはブーケを抱えたまま席に戻っていく。

 私と一ノ瀬先輩が…?そんな奇跡ありえなくない?

 席に戻ると一ノ瀬先輩が「良かったじゃん」と言葉を掛けてきて、私は「…はい」なんて曖昧な返事をしてしまった。