中学一年生になっても、ゆいの世界はあまり変わらなかった。
相変わらず、竜也と飛鳥が隣にいて、誰もが彼女を特別な存在だと思っている。

だけど、次第にその“特別”という感覚が怖くなってきた。

「ゆい、今日、放課後一緒に帰ろう」

市川くんの声が、どこか遠くから聞こえてきた。
他の子たちと違って、彼は真面目で優しく、ゆいにとって安心できる存在だ。

でも――

竜也が振り向いて、飛鳥が無言でにらむ。
その視線の冷たさに、ゆいは胸が締め付けられるような感覚を覚えた。

「……どうして、あの二人はこんなに私に執着するの？」
ゆいは、自分がただ「隣にいるだけ」で、なぜ二人がこれほどまでに反応するのか、分からなくなっていた。

そして、ゆいは気づく。
竜也も、飛鳥も、ただの友達じゃないのだと。
どこかで、二人は自分を“自分の物”だと思っていると感じるようになった。