ゆいは静かに目を閉じた。
自分の中で、ひとつの決断が下った瞬間だった。
竜也を選ぶ――
その言葉を口にしたとき、心の中に芽生えた安堵感があった。それでも、同時に重い責任を感じていた。
飛鳥の目を見たとき、彼の心の痛みがひしひしと伝わってきた。

「私は……」
ゆいの声が震えそうになったが、なんとか続けた。
「竜也を選びます。」

その言葉を発した瞬間、部屋が静寂に包まれた。
竜也は一瞬、驚きの表情を浮かべ、すぐにその表情を隠した。
飛鳥の顔には、予想以上の痛みが走ったようだった。
彼の瞳には、明らかに怒りが滲んでいる。だが、同時にその怒りの中にある深い悲しみも見て取れた。

竜也はゆっくりと歩み寄り、その目をゆいと合わせた。
「お前が選んだのは、俺だな?」
その問いかけには、確信が込められていた。

ゆいは静かに頷いた。
「はい。」

その瞬間、竜也の顔に浮かんだ笑顔は、ほんのわずかに優しさを漂わせた。
「ありがとう。」
その言葉だけで、ゆいは自分が選んだ道が間違っていなかったと確信した。

一方で、飛鳥の表情は硬直したままだった。
その目に浮かんだのは、強い決意――それと同時に、彼自身の中に渦巻く怒りと無力感だった。
「お前、ほんとうに俺を選ばないのか?」
飛鳥はその言葉を発した瞬間、周囲の空気が重くなるのを感じた。

ゆいは飛鳥を見つめ、心の中で言い訳をしようとしたが、どうしてもその言葉が出なかった。
「ごめんなさい……」
その謝罪の言葉が、彼女の口から自然に出てきた。

飛鳥は目を閉じ、静かに深呼吸をした。
「わかってる。」
その一言だけが返ってきた。