竜也と飛鳥、二人の間に挟まれたゆいは、どこか夢の中にいるような感覚に包まれていた。
彼らの視線が自分に集中し、その緊張感がひしひしと伝わってくる。
道隆の言葉が耳の中で響いていた。

「今から、あんたたち二人に試練を課す。」
その一言が、ゆいにとっては思いのほか重く、心を締め付けた。

試練……
それが意味するものは、ただひとつ。
誰を選ぶか、それを決める瞬間が来たということだった。

道隆が静かに手を振った。
その動きと共に、竜也と飛鳥はそれぞれ一歩前に出る。

「試練が始まる」
道隆が言うと、竜也は一度深呼吸して、ゆいを見つめた。その瞳の中には、いつもの冷徹さと優しさが混じり合っている。

「お前にとって、俺がどれだけ必要か、それを試す。」
竜也の声は低く、深く響いた。
「もし、俺の覚悟が足りないと思ったら、選ばなくてもいい。」
その言葉は、ゆいを安堵させると同時に、胸を痛ませた。
竜也はすでに覚悟を決めている――それが伝わってきた。

一方、飛鳥は竜也を冷徹に見つめ、ゆいを見守っている。
「俺が守れるなら、何でも守る。」
飛鳥は言った。
「お前が望むもの、どんな手段を使ってでも与える。それが、俺の覚悟だ。」

その言葉には、どこか必死なものが感じられた。
飛鳥は自分の心の中で、今までの自分が持っていた欲望をすべてぶつける覚悟を決めたのだろう。
彼は、ゆいのために全てを犠牲にする覚悟ができている。

そして、ゆいの心はますます乱れていった。
竜也と飛鳥。
二人とも、彼女を守るために戦っている。それだけでなく、彼ら自身の誇りや信念が、今この瞬間にぶつかり合っている。

ゆいは静かに目を閉じた。
どちらを選んでも、失うものは大きい。
だが、どちらも大切な存在だと心の奥で理解している自分がいた。
この選択が、これからの自分の人生を決定づけるのだと。