……気づいてた。
ゆいが誰かに“好き”って気持ちを持ってること。
そして、それが自分じゃないこと。

胸が張り裂けそうだった。
頭の中で、何百回も“市川”って名前を消し去ろうとした。

でも、怖かった。
ゆいに嫌われるのが。
だから、俺は優しいふりをした。
ずっと隣にいられるように。

「ねぇ、ゆい。今日、一緒に帰ろう?」

市川より先に声をかけて、
笑って、手を引いた。

……それだけで、胸が少しだけ軽くなった。