その夜、竜也は何度も鏡の前で自分を見つめていた。
ゆいを手に入れるためには、もう何も怖くない。
その覚悟が、竜也の中に深く根を張り始めていた。

彼は父親である西園寺彰男の影響を受けた者として、何かを達成するためには手段を選ばないことを幼い頃から教えられてきた。
だが、今、竜也はその教えに従おうとしている。

「これで良いんだ」と、竜也は自分に言い聞かせるように呟いた。

その時、電話が鳴った。
飛鳥からだった。

「竜也、話がある」

その言葉に、竜也は一瞬迷った。
だが、すぐに電話を取った。

「何だ?」
竜也の声は、いつもの冷静さを保っていた。

「お前は、ゆいをどうするつもりだ?」

その問いに、竜也は少しの間、答えることができなかった。
だが、ゆっくりと口を開く。

「俺は、ゆいを守るために何でもする。そのためには、何だってする覚悟がある」

その言葉に、飛鳥はしばらく黙っていた。
竜也の覚悟を感じ取ったからだ。

「俺もだ」
飛鳥は静かに言った。
「でも、負けたくない」

竜也はその言葉に、無意識に肩の力を抜いた。
飛鳥もまた、ゆいを手に入れるために必死なのだ。
だが、今、それぞれの覚悟は、確実に交錯している。