一方、飛鳥はゆいが竜也と話しているのを遠くから見ていた。
その表情は、まるで何かを待っているようだった。
竜也の方が、ゆいを手に入れる確率が高い。
そう感じていたのだ。

だが、飛鳥にはどうしても諦めることができないものがあった。
ゆいを手に入れるということは、ただの勝ち負けではない。
それ以上の意味があった。

「どうする、俺は……」

飛鳥はゆいの姿を目で追いながら、心の中で葛藤を繰り返していた。
竜也がゆいに告げた言葉、それを聞いた飛鳥は、何かが音を立てて壊れたように感じた。

彼は今、何もかもがどうでもよくなっている。
もしゆいを奪われたら、自分はどうなるのか?

「でも、負けたくない……」

その瞬間、飛鳥の目に浮かぶのは、かつて母・葵が言った言葉だった。
「力こそすべて」。

飛鳥は無意識にその言葉を繰り返しながら、ゆいに対する思いが歪んだ形で膨れ上がっていくのを感じていた。