竜也は毎日、ゆいを見守っていた。
それでも心の中に、少しずつ不安が芽生え始めていた。

「ゆいは……本当に、俺のことをどう思っているんだ?」

彼はそれを問いかけるように、空を見上げる。
中学生になってから、竜也は初めて自分の心の中に芽生えた、今まで感じたことのない不安定さに気づいていた。

ゆいを守るべきだと思っている、という思いは変わらない。
だが、最近、彼女の瞳に自分の存在がどれだけ映っているのかがわからなくなってきた。

毎日、彼女の笑顔を見ていることが、どこか苦しくなってきた。
あの優しさ、あの無邪気さは、もしかしたら他の誰かにも向けられているのではないか――

飛鳥の存在も、竜也には小さな不安材料だった。
あいつがゆいを好きだと気づいたのは、ずいぶん前のことだ。
だが、飛鳥はそれを明確に表に出さない。
それがまた、竜也の胸の中で焦燥感を増していた。

そして、ある日。
放課後、竜也はゆいと一緒に帰るため、校門前で待っていた。

「ゆい、今日は一緒に帰ろうか?」

その声をかけると、ゆいは少し驚いた顔をした。
だがすぐに、彼女はにっこりと笑って答える。

「うん、行こう!」

その笑顔に、竜也の胸はさらに締めつけられた。
そして、背後から聞こえる飛鳥の声。

「俺も、一緒に帰ろう」

竜也とゆいの間に、ほんの少しだけ距離ができる。
その距離感が、竜也にとっては不快だった。

だが、無理に飛鳥を排除することはできなかった。
竜也もまた、それが“運命”だと信じていたから。