「ごめん、日美子!今、すごく無神経なことを言った⋯⋯」
「そう?気付かなかったわ」
日美子は顔色ひとつ変えず、鍋から肉ばかり引っ張り出している。
「ちゃんと野菜も食べなきゃダメだよ。そっか⋯⋯でも、言われてみればそうだよね。自営業だったら定年関係なく生涯現役で働けるから、勿体ないなと思ったけど、本人たちが『もう充分働いた』って言ってるなら、それが隠居の時なのかも。昨日は戸惑ったけど、日美子に話したらスッキリしたよ。ありがとう。早めに引き継ぎを済ませて、気持ちよく見送るよ」
玲司がそのことを両親に伝えると、二人は歓喜してシンガシンガシンガシンガ⋯⋯と、夢のシンガポールを歌いながら、変な踊りを始めた。
それでも、引き継ぎにはじっくり時間をかけ、両親がマレーシアへ旅立ったのは、それから一年後のことだった。
「そう?気付かなかったわ」
日美子は顔色ひとつ変えず、鍋から肉ばかり引っ張り出している。
「ちゃんと野菜も食べなきゃダメだよ。そっか⋯⋯でも、言われてみればそうだよね。自営業だったら定年関係なく生涯現役で働けるから、勿体ないなと思ったけど、本人たちが『もう充分働いた』って言ってるなら、それが隠居の時なのかも。昨日は戸惑ったけど、日美子に話したらスッキリしたよ。ありがとう。早めに引き継ぎを済ませて、気持ちよく見送るよ」
玲司がそのことを両親に伝えると、二人は歓喜してシンガシンガシンガシンガ⋯⋯と、夢のシンガポールを歌いながら、変な踊りを始めた。
それでも、引き継ぎにはじっくり時間をかけ、両親がマレーシアへ旅立ったのは、それから一年後のことだった。



