「シンガシンガシンガシンガシンガシンガ⋯⋯」
 玲司の母は唐突に奇妙な歌を歌い出した。
「母さん、急にどうした!?」
「これ?夢のシンガポールって歌よ」
「知らないよ!そもそも、マレーシアに移住するのと、シンガポールと何の関係が?」
 玲司はすっかり混乱している。
「知らないのか?マレーシアとシンガポールはかなり近いんだ。だけど、夢のシンガポールは物価が高いからな。すぐお隣のマレーシアで暮らして、時々シンガポールに遊びに行けば丁度いいだろ?」
「そんなこと言われても、これといって東南アジアに興味なかったから、知らないって!まさか、父さんたちがそんなことを考えてたことも全く知らなかったし⋯⋯」
 玲司は、両親の唐突な話に戸惑うばかり。
「ただ、もしお前が反対だと言うなら、何がなんでも行くとは言わんよ」
「反対というより、単に心配なだけだよ。そんなうまい話があるのかな?って」