何ヶ国後も操ることができるのに、英語の基本中の基本、I miss youのニュアンスすらわからない。
　日美子は、一人を好む性格で、誰かがいないことを淋しいなどと思ったことがない為、理解できないのだ。

　幼い頃から、集団の中の孤独は、経験せずとも理解できたのに、やや独特な感性の持ち主である。
「もしかして、ご両親がいないことが淋しくて、家のことまで手が回らないの？」
　玲司は、遠慮がちに尋ねたが、
「全然。無理に家族ごっこを続けても、どうせいつかは破綻するし」
　日美子は、両親が去っても淋しくなかった。
（よかった⋯⋯単に家事が苦手なだけみたいで）

　玲司は、子供の頃から家事を手伝ってきたので、一通りのことは出来る。
　まるで、よくありがちな、彼氏に尽くす彼女の如く、頼まれてもいないのに、玲司は日美子の身の回りの世話をするようになった。
　尽くす女は、何故か大事にされない傾向がある。