ごく普通の高校に通っていた玲司は、家業を継ぐために、卒業後の進路は理容専門学校に決めた。

 玲司が高校卒業を控えている頃、日美子の家では、大きな変化が。
 日美子が18になったら、両親は離婚することを、もうずっと前から決めていたというのだ。
 実は、両親とも同性愛者で、世間体の為に友情結婚し、代理母出産によって日美子を授かった。
 屋敷には日美子だけが残り、両親はそれぞれの愛する人のもとへ。

 そのことを知った玲司は、日美子のことを慰めたくても、事情が事情なので、うまく言葉が見つからなかった。
「何も、私が家から追い出されたわけじゃないし、絶対に私には迷惑をかけないって約束したから。残りの人生、好きにしたらいいんじゃない」
 日美子は平気な顔で言うが、かつて、
「私の話し相手は、両親と玲司だけで充分」
 そう言っていたのに、その両親は、一人娘の日美子を残して去って行った。