日美子は、恋愛どころか、恐らく人間そのものに興味がないのだろう。
(僕の想いが、日美子にとって重荷になるのだけは嫌だな⋯⋯)

 玲司は、日美子を諦める努力をしたこともあるが、彼女が時折見せる“天使の笑顔”に何度でもやられてしまうのであった。
 諦めようとすればするほど、余計に日美子のことを意識してしまうだけだ。
(日美子を困らせたりしなければ、密かに好きでいても構わないだろう)
 そう思い、玲司は自分の恋心を悟られぬよう、これからも日美子の傍にいようと決めた。

 恋愛に興味がないということは、玲司の恋が実ることがないだけでなく、他の誰かにとられてしまうこともないということだ。
 そう思えば、まだ救いはあるだろう。

 玲司は、日美子に苦手科目を教えてもらいながら、無事、高校受験も乗り越えた。

 日美子は、中卒どころか幼稚園すら出ていないまま、15、16、17と成長していった。