さっきまで隣にいた人の声や仕草が、
まるで余韻のように胸の奥に残っている。

——あぁ、どうしてこんなに、苦しいんだろう。

足を止めて、
小さく息を吐いた。

……告白しよう。
……潔く、振られて終わろう。

そんな考えがふっと浮かんだのは、
きっとその時だった。

分かってる。
彼にとって私は、ほんの子供にすぎない。

恋愛対象なんかじゃないってことくらい、
最初から分かってる。

告白したって、
ただの自己満足。
それでも——

言わなきゃ、きっと後悔する。

「……いつがいいかな」

口の中で、そっと呟いた。

街路樹の桜が、
夕陽に照らされて少しずつ色を変えていく。

——入学式。
うん、そうしよう。

新しい春に、
ちゃんと自分の気持ちを伝えて、
この想いにけじめをつけよう。

そう決めた瞬間、
心の奥で、
何かが静かにほどけていくのを感じた。