……いいのか悪いのか、患者である理緒は、自分の運命を受け入れているように見えた。
まだ十代だというのに、子供らしからぬ冷静さで、時に自分の身体のことを大人より冷徹に語る。
「仕方ないよね」と笑う顔を見るたびに、むしろ俺の方が試されているような気がした。
いや、きっといいんだろうな。
……「生きたい」「助けてほしい」と懇願される方が、俺の心が持たない。
そうでなくとも、無力さを突きつけられるあの目を、俺は正面から見られない。
ただ、受け入れて笑う彼女を前にして、自分が何者であるか、医者として何をしているのか、見失いそうになる。
さらに気がかりなのは――彼女の友人らしい、中野桜という少女だった。
……きっと理緒の病状なんて、微塵も知らないのだろう。
早く退院できるといいね、なんて笑顔で言っていなかったか。
無邪気なその言葉に、胸の奥がひどく痛んだ。
理緒の冷静さよりも、彼女の無邪気さの方がよほど残酷に思えた。
何も知らない子供の笑顔と、すべてを悟った患者の笑顔――そのどちらにも、俺は立っていられなかった。


