銀河鉄道に乗るジョバンニとカンパネルラ。
……死を悟っているカンパネルラに対して、
何も知らない無邪気なジョバンニ。
『カムパネルラ、また僕たち二人きりになったねえ、
どこまでもどこまでもいっしょに行こう』――
ページの文字が、静かに胸の奥を掻き乱す。
窓の外では、夜の街の光がぼんやり瞬いていた。
ずっと理緒と一緒にいられると思っていた。
病室で笑い合っていれば、
それだけで時間は続いていくと、
何の根拠もなく信じていた。
……あの頃の私が、否応なしに蘇る。
まだ「別れ」なんて言葉を知らないまま、
彼女の笑顔を当たり前に信じていた、あの時の私。
目の前で理緒が静かにページをめくるたびに、
紙の音が小さな波みたいに胸の中に広がっていく。
そのたびに、今と過去が入り混じって、
息が少しだけ詰まった。


