「……大学の話とか、理緒とするんだな?」

唐突にそう言われて、思わず瞬きをした。
声のトーンが少しだけ硬くて、どう返せばいいか分からない。

「……? はい。もう2年生なので……。
 進路とか、将来どうしようって話はよくしてます」

「……そうか」
ほんの一拍の間。
それから、彼は何かを飲み込むように小さく息をついた。

その横顔が、どこか苦しそうで。
私は思わず、パンフレットを胸に抱え直した。

(……なんでだろう。別に変なこと言ってないのに)

彼の返事があまりにも淡白で、
自分の言葉のどこが引っかかったのか分からないまま、
会話はそれ以上続かなかった。

雨上がりの光が、病棟の窓ガラスに滲んでいた。
白衣の背中が遠ざかるたびに、
胸の奥が少しずつ、冷たく沈んでいくのを感じた。