日向さんは、私の知らない世界に立っている大人の男性だった。

……私は緊張で目を合わせることすらできないのに、構わず穏やかな笑みを向けてくれる。
その笑顔に触れた瞬間、胸の奥がふっと温かくなる。

ときどき、子供にするように優しく頭を撫でてくれることがあった。
その手の温かさに戸惑いながらも、心のどこかで安心してしまう自分がいる。

よく見ると、本当に整った顔立ちをしていた。
線の細いシルエットなのに、白衣の下には確かに男の人らしい筋肉の輪郭が隠れている。
触れることなんてできないのに、目を逸らそうとするほど、余計に気になってしまう。

無意識に惹かれていることに気づくまで、そう時間はかからなかった。